華・ばぁばから力をもらう

華とじぃじの中学受験

まだ建設中の早乙女中の下見を済ませた華とじぃじは、本屋さんに立ち寄りました。

早乙女中は来年4月の開校ですから、過去問はありません。でも全国の公立中高一貫校の過去問題集が出ていました。

じぃじは分厚い銀色の問題集を手に取ると、さっさとレジに向かっていきました。

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会計を済ませると、じぃじは「コピーを取りたいのだが」と店員さんに言い、操作方法を教えてもらってコピーを取りました。県内にある公立中高一貫校の問題を一通りコピーします。

じぃじは問題をちょっと眺めてから、原稿用紙を買い足して、ようやく本屋さんを出ました。

じぃじは道場の隅の、いつも華が使っている机の上にコピーしたばかりの過去問を広げました。

「ほれ、やってみろ」

じぃじは事もなげに言いますが、華は「ムリ!だって6年生になったばかりだよ?まだ習ってない事も出るんでしょ?」とびっくりして答えます。

「なんだ、習ってないとできないのか?本番でもそういう言い訳をするのか?」
「だってー」

じぃじが姿勢を正して、華の方を向きます。華も慌てて正座します。
大切な事を伝える時の、じぃじの合図です。

「いいか、華の今の実力が知りたいんだ。テストをしてみて、解けない問題があったらな、それが華の弱点なんだ。弱点を見つけて次々つぶす、習うのを待ってるんじゃなくて、自分で取りに行く、それがこの1年で華がやることなんだ。」

じぃじがものすごく大きく見えます。華は泣きそうになりながら、縮こまってしまいました。

そんな華の姿を見たじぃじが、フっと微笑んでこう言いました。

「華がオトメ中に通うようになったら、ばぁばも喜ぶだろうな」

華の小さな身体が、雷にでも打たれたかのようにピシッと伸びました。

じぃじから聞かされて、ばぁばのことはよく知っていました。女学校の出身で、なぎなたと合気道を稽古し「女にしておくには惜しい」と周囲の人から言われたばぁば。

若い頃はじぃじの工務店で職人の世話をし、じぃじが引退してからは道場の弟子たちの面倒を見て、稽古着を縫い、袴をこしらえ、休むことなく働いた昭和の女性。

それが華の祖母・タヱなのです。華は会ったことはありませんが、ばぁばのことをものすごく尊敬しています。

華は背筋を伸ばして鉛筆を手にすると「やる」と言って過去問を解き始めました。

はな は かこもん を てにいれた!
はな は ばぁばから ちから を もらった!


じぃじのひとり言

過去問を解く。最初は全く解けません。問題の意味すら分からないでしょう。中学受験を決意した小学生が、最初にぶつかる壁とも言えるでしょう。

それでも、一通り解いてみる。何かは書く。解けそうな問題はないかと探してみる。最初はそれこそ鉄を咀嚼するような辛抱強さが必要です。

そうして最初の壁にぶつかってみると、お子さんに何が足りないかが見えてきます。採点しながらそれを教えるのがお父様、お母様の役目ですね。

過去問を解くことで「知らないところ」「あいまいだったところ」があぶり出されますから、過去問を解く事は絶対に必要なのです。

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